「JBA(公益財団法人日本バスケットボール協会)」は、2015年以降、「マンツーマンディフェンス推進」を通して、15歳以下(U15)のチームに対し、「チーム戦術」よりも「個の育成」を求めています。
また、この「マンツーマンディフェンス推進」では、公式戦において、マンツーマンディフェンスを監督・管理する役割の「マンツーマンコミッショナー(MC)」を配置し、実際にペナルティ(「マンツーマンペナルティ」)も存在するため、指導者だけでなく、選手個人個人が、「マンツーマンディフェンス推進」をしっかり理解しておかなくてはなりません。
- マンツーマン推進の目的
- マンツーマンディフェンスの基準と試合での注意点
- 1.マンツーマンディフェンスの意識がある(声のサイン・手のサイン・アイコンタクト・ポジション等)
- 2.ボールや相手と共に動いている
- 3.少なくとも、マッチアップエリア付近からはマンツーマンディフェンスを始めている
- 4.マッチアップエリア内のオンボールには1.5m以内を目安としてマッチアップしている
- 5.オンボールのトラップはよいが、トラップが終息したら直ちにマッチアップを開始している
- 6.ヘルプサイドのディフェンスがミドルラインをまたぎ越していない
- 7.オフボールの選手に対して、数的優位な守り方をしていない(U15で予測に基づくプレーを除く)
- 8.オフボールのオフェンスのポジションチェンジに対し、スイッチしていない
- 9.オフボールのディフェンスでは、マッチアップするプレーヤーを意識して移動している
- その他の注意点(ゾーンディフェンスとプレスディフェンスに関する注意)
- 試合での判断は審判でなく『マンツーマンコミッショナー』が行う
- 試合での罰則(マンツーマンペナルティ)について
- マンツーマンディフェンス指導動画
マンツーマン推進の目的
バスケ界全体としてのマンツーマン推進の目的
●素晴らしい運動能力を備え、動ける選手を育てる
●ディフェンス意識が高く国際トップレベルの選手を止められる選手を育てる
●低身長でも1対1が素晴らしい選手1対1で圧倒できる選手を育てる
●発育・発達段階に応じた適切な指導で選手をより高いレベルへ導く
●子どもたちがよりバスケットボールを楽しみ、打ち込める環境を作る
●日本全体の競技力を向上させる
それぞれのチームとしてのマンツーマン推進の目的
「プレイヤーズファースト」を尊重し、目先の勝利に捉われない長期的視点に立った指導
- 1対1でバスケットボールを楽しむ・個人のスキルアップを図る・状況判断力、理解力を高める・想像力を養う
- 強力な1対1の突破力、得点力のある選手が育つ
- ディフェンスで相手を止められる選手が育つ
- 高い運動能力を持ち、オールラウンドに活躍できる選手が育つ
- マンツーマンディフェンスの強化により、将来的なゾーンディフェンスの活用を含めた総合的なディフェンス力の強化する(土台をつくる)
選手としてのマンツーマン推進の目的
オンボールのオフェンス・ディフェンス、オフボールのオフェンス・ディフェンスの向上
●オンボールオフェンス :個人で破っていく力、得点を取る力
- ショット
- ドライブ
- パス
- 1対1の駆け引き
●オンボールディフェンス:個人で守りきる力
- ショット、ドライブを止める(インラインを守り続ける)
●オフボールオフェンス :スペーシング
- どこにいるか
- どこへ動くか
- いつ動くか(タイミング)
●オフボールディフェンス:ポジショニング
- マークマンをノーマークにしない
- ボールマンディフェンスを助ける(予測する力)
- ボールとマークマンを常に捉える(ビジョン)
マンツーマンディフェンスの基準と試合での注意点
“マンツーマンコミッショナーチェック表/報告書 2021/1/4 改訂版”、”マンツーマンディフェンスの基準規則 2019 年2 月21 日一部改定”、”マンツーマンディフェンスの基準規則 2021 年4月1日”より一部引用
1.マンツーマンディフェンスの意識がある(声のサイン・手のサイン・アイコンタクト・ポジション等)
全てのディフェンス側プレーヤーは、マンツーマンで、オフェンス側プレーヤーの誰とマッチアップしているか明確でなければならない。
ディフェンス側プレーヤーのアイコンタクト、言葉のサインまたは手のサイン(指さしすること)により、明確に誰とマッチアップしているかが、コミッショナーにわかること。
2.ボールや相手と共に動いている
ディフェンス側プレーヤーは常にマッチアップするオフェンス側プレーヤーが見えるか、感じられるように移動しなくてはならない。
ボールの逆サイド側(ヘルプサイド)のディフェンス側プレーヤーは、自分のマークマン(オフェンス側プレーヤー)及びボールも見えるポジションを取ること(ボールとマークマンを見る)。
ボールがドリブルまたはパスで動いた場合、全てのディフェンス側プレーヤーはボールと共に動かなくてはならない(ボールが動けば、ボールとオフェンス側プレーヤーが見えるポジションに一緒に動く)。ただし、フェースガードで守る場合はその限りではない。
ボールを保持していないオフェンス側プレーヤーがポジションを変えた場合、ディフェンス側プレーヤーもオフェンス側プレーヤーと共にポジションを変える。オフボールで、スクリーンが無い状況でのスイッチは禁止する。
マンツーマンディフェンスの見分け方
- マンツーマンの意識がある。(声のサイン・手のサイン・アイコンタクト・ポジション等)
- ボールや相手とともに動いている。
- 相手チームのフロントコート内のマッチアップエリア付近からはマンツーマンディフェンスを始めている。(オールコート、ハーフコート等ディフェンスをし始める位置を定めない。)
- マッチアップエリア以外において、チームとして個々のオフェンスに対してピックアップするディフェンスを行う場合は、スローインするオフェンスにマッチアップしなければならない。
※スローイン時のマッチアップエリア内制限区域においてはオフボールマンへのトラップは許される。
3.少なくとも、マッチアップエリア付近からはマンツーマンディフェンスを始めている
マッチアップの基準は「マッチアップエリア(3 ポイントラインを目安とする)」内では常に適用される。
4.マッチアップエリア内のオンボールには1.5m以内を目安としてマッチアップしている
ディフェンス側プレーヤーのポジションは、ボールとリングの間に位置し、距離は最大1.5 メートル、つまりシュートチェックと1対1のドライブを止められる距離であること。
オフェンス側プレーヤーがボールをレシーブした時、ディフェンス側プレーヤーがボールマンにつく意図が明確にわかる、上記した位置と距離にポジションチェンジをすること。
5.オンボールのトラップはよいが、トラップが終息したら直ちにマッチアップを開始している
ボールを保持している選手をトラップすることは許されるが、トラップ後は直ちにマッチアップを明確にしなければならない。
また、マッチアップが明確であればローテーションが許される。
「ミニバスケットボール」(U12)において、ボールを持っている選手にトラップが仕掛けられる場面は次のとおりとする。
- ドリブルが行われている時、またはドリブルが終わった時
- パスが空中にある間に移動できる距離で、パスを受けた瞬間にトラップを成立させることができる時
- 移動が容易に行える距離にある時(自分のマークマンとボールマンの距離の目安:2~3m)
6.ヘルプサイドのディフェンスがミドルラインをまたぎ越していない
全てのヘルプサイドにいるディフェンス側プレーヤーは、最低限片足はヘルプサイドに置かなくてはならない。
ボールサイドとヘルプサイドの境界線は、ミドルライン(リングとリングを結ぶ線)である。ただし、ヘルプまたはトラップにいく場合を除く。
7.オフボールの選手に対して、数的優位な守り方をしていない(U15で予測に基づくプレーを除く)
全てのポジションで、ボールを持っていないオフェンス側プレーヤーをトラップすることは違反である。
ただし、制限区域内において、予測に基づいてボールを持っていないオフェンス側プレーヤーをトラップすることは許される。
またスローイン時(サイド・エンド両方)においてのみ、スローインをするプレーヤーにマッチアップするディフェンス側プレーヤーが1.5 メートル以内のマッチアップの距離制限を超えて制限区域内のオフボールプレーヤーをトラップすることは許される。
8.オフボールのオフェンスのポジションチェンジに対し、スイッチしていない
スイッチはスクリーン、トラップ後、ヘルプ後と“ラン&ジャンプ”の状況で許されるが、オフボールオフェンス側プレーヤーのポジションチェンジに対するスイッチは違反である。
ディフェンス側プレーヤーがスイッチした場合、プレー中に、ディフェンス側プレーヤーが直ちに新しいオフェンス側プレーヤーとマッチアップしたことが、コミッショナーに認識できるように明確にすること。
9.オフボールのディフェンスでは、マッチアップするプレーヤーを意識して移動している
ヘルプディフェンス後、全てのディフェンス側プレーヤーは、直ちにオフェンス側プレーヤーと明確にマッチアップしなければならない。
オフボールディフェンス側プレーヤーは、ヘルプディフェンスのために一時的にディフェンスポジションを変えること(ヘルプローテーション)が許される。
ボールを持っていない選手にマッチアップするディフェンス側プレーヤーは、リングを守るために、オンボールディフェンス側プレーヤーをヘルプできる。
オンボールディフェンス側プレーヤーがペネトレーションを止められず、抜かれた場合、リングへ向かうドリブルペネトレーションに対しては、ヘルプディフェンスが許される。オフボールのオフェンス側プレーヤーが、リングへカットすることをヘルプすることも許される。
ヘルプディフェンス後に、オンボールのプレーヤーに対してトラップになっても構わない。
その他の注意点(ゾーンディフェンスとプレスディフェンスに関する注意)
様々なゾーンディフェンスまたはコンビネーションディフェンスは、マッチアップエリア以外でも不正である。
チームがプレスディフェンスを採用した時(フルコート、3/4 コート及びハーフコート)でもマッチアップの基準に合致すること。
プレスディフェンス採用時の基準は以下の通りである(フルコート、3/4 コート及びハーフコート):
ボールを持っている選手をトラップすることは許されるが、ローテーション後のピックアップを確実に行い、コミッショナーにマッチアップが明確にわかるように行うこと。
ゾーンディフェンスの見分け方
- 上記に反すること。
- ヘルプサイドにいるオフボールのディフェンス側プレーヤー(3 線)の両足がボールサイドにある。
- オフボールのオフェンス側プレーヤーに対して、数的優位な守り方をしている。(制限区域内へのスローイン時を除く)
- オフボールのスクリーンを伴わないポジションチェンジに対して、スイッチを行っている。(スクリーンがある場合にはスイッチが認められる。)
試合での判断は審判でなく『マンツーマンコミッショナー』が行う
”マンツーマンディフェンスの基準規則 2019 年2 月21 日一部改定”より一部引用
ゲーム中はコミッショナーがマンツーマンディフェンスを監督・管理する。マンツーマンディフェンスの基準規則(以下、「基準規則」)違反の判断はコミッショナーが行い、コミッショナーのいない大会でも、審判の判断だけで処置を下すことはない。
- コミッショナーは違反行為が生じた際に「黄色(注意)」の旗を振り、そのチームのベンチを指し、コーチ・選手の対応を確認する。
- 選手のプレーが改善しない場合は、「赤色(警告)」の旗を上げ、ゲームクロックが止まった際に審判に伝達し、TO 席の前で両チームのコーチに対して内容を簡潔に説明する。(審判により、コーチに警告が与えられる)
- 同じチームの 2 回目以降の違反行為に対しては、1 回目と同様にゲームクロックが止まった際に審判に伝達し、TO 席の前で両チームのコーチに対して内容を簡潔に説明する。(審判により、コーチにマンツーマンペナルティが与えられる)
- 「赤色(警告)」の旗が掲げられた場合、コミッショナーはボールのコントロールが変わった時およびボールがデッドになった時に速やかにホイッスル・ブザー等で審判に知らせてゲームを止める。オフィシャルはホイッスル・ブザー等と同時にゲームクロックを止める。ゲームを止めた後は、赤旗に関する処置を行う。
「黄色(注意)」の旗から「赤色(警告)」の旗への移行の目安は「5 秒程度」とする。ただし悪質な違反行為とコミッショナーが判断した行為については「黄色(注意)」の旗を振らずに「赤色(警告)」の旗から振ってよい。また、「黄色(注意)」の旗を振っているときに即座に「赤色(警告)」の旗を振ってよい。
試合での罰則(マンツーマンペナルティ)について
- 「マンツーマンペナルティ」の場合、スコアシートコーチ欄に(M)と記述する。
- マンツーマンペナルティ(M)は、U12においては3個、U15においては2個で失格退場とする。
- 失格退場に対しては規律案件としない。
- 「マンツーマンペナルティ(M)」と「テクニカルファウル(C・B)」との合算による失格退場は設定しない。