東京オリンピック女子バスケットボールの準々決勝 日本vsベルギー戦、試合終了間際の攻防は本当に見ごたえがありました。銀メダルを獲得した日本女子バスケ(Akatsuki Five)のベストゲームだったのではないでしょうか。
とりわけ残り15秒での林選手の逆転スリーポイントは歴史に残るクラッチショットだったと言っても過言ではないでしょう。
気になるのは、タイムアウト明けのベルギーがスローインをバックコートから始めたことです。ベルギーは、ルール上認められているにも関わらずフロントコートからスローインを始めずに、バックコートから始めることを選択しました。
17-2-4 第4クォーター、各オーバータイムでゲームクロックが2:00 あるいはそれ以下を表示しているとき、バックコートからスローインを与えられることになっているチームに認められたタイムアウトの後で、そのチームのヘッドコーチは、フロントコートのスローインラインからのスローインでゲームを再開するか、バックコートのゲームが止められた場所に最も近いアウトオブバウンズからのスローインでゲームを再開するかを選択することができる。
“2021 バスケットボール競技規則” 「公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)」より引用
結果的に日本に強いプレスを掛けられて良いシュートを放つことができず、敗れたのでベルギー側の判断は失敗だったと言えるでしょう。
このように接戦において試合終盤のほんの少しの判断の差で勝敗が決まってしまうのがバスケの難しさでもあり、面白さでもあります。
そこで、今回は、ゲーム終盤「クラッチタイム」で選手が気を付けることや、ルールについて説明します。
ゲームの終盤で必ず把握しておかなければならないこと
得点差
まずは得点差を把握しておかなければなりません。※ただし、得点差は終盤でなくても常に把握しておかなければなりませんが、、、
その上で、ゲーム終盤では、追いつくためには何本のシュートが必要か。さらに失点をどれぐらいに抑える必要があるのかなどを考慮しながらプレーすることが求められます。
- 4クォーターの時点で10点差以内の点差の場合、点差とは言えないレベルでどちらが勝ってもおかしくありません。
- 2分を切るぐらいの残り時間で、10点差以上点差が開くと苦しくなってきます。こちらが上手くやれたとしても、相手に上手く時間を使われると勝利が難しくなるためです。
- 残り10秒(ワンチャンス程度の時間)で、5点差以上(ワンチャンスでとれる最大得点は4点)の場合は限りなく逆転は難しいですが、以下のように奇跡的な逆転劇も起こるためそれでも諦めてはいけません。
残り時間
オフェンスのために必要な残り時間を把握するのはもちろんですが、第4クォーターの残り2分以下では下記のようにルールが変わるので必ず残り時間を把握しておく必要があります。
- シュートが決まった時にゲームクロックが止まる
- スローインのときに 審判が「イリーガルバウンダリラインクロッシングシグナル」を宣すると、境界線を越えたときに「テクニカルファウル」となる
- スローインする選手の手からボールが離れる前の接触は、アンスポーツマンライクファウルとなる
- タイムアウトを取った時、スローインでの再開位置を選べる
- 3回のタイムアウトが残っていても2回までしかタイムアウトをとることができない
ファウルの数
「自チームのチームファウル」と「相手チームのチームファウル」の数はもちろんですが、「自分や仲間のファウルの数」、「相手チームの要注意選手のファウルの数」も把握しておく必要があります。
終盤に「ファウルトラブル」にならないように常に自分のファウル数を把握しておくことはもちろんですが、チームファウルや仲間のファウル数によってディフェンスの強度や守り方に違いが出てきます。また、相手チームにファウルが嵩んでいるときは、ファウルを得る目的で強引にドライブしたりするなど攻め方に違いが生じます。
また、試合の終盤では、「ファウルゲーム」という作戦があります。わざとファウルをして、相手にフリースローを与える代わりに時計をなるべく進めずにボールポゼッションを得るための作戦です。チームファウルの数によってファウルゲームを行うタイミングが変ってきます。
タイムアウトの数
試合の後半(第3クォーターと第4クォーター)では、合計3回のタイムアウトを取ることができます。ただし、残り時間が2分以下ではタイムアウトが残っていても、2回までしかタイムアウトできません。
18-2-5 それぞれのチームに認められるタイムアウトの回数は:
“2021 バスケットボール競技規則” 「公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)」より引用
・前半(第1クォーターと第2クォーター)に2回。
・後半(第3クォーターと第4クォーター)に3回。
ただし、第4クォーターで、ゲームクロックが2:00 あるいはそれ以下を表示しているときには2回までしかタイムアウトをとることはできない。
・各オーバータイムに1回。
残り時間2分以下の状況ではタイムアウトを取った後、スローインの位置を選ぶことができます。(ミニバスは対象外)
17-2-4 第4クォーター、各オーバータイムでゲームクロックが2:00 あるいはそれ以下を表示しているとき、バックコートからスローインを与えられることになっているチームに認められたタイムアウトの後で、そのチームのヘッドコーチは、フロントコートのスローインラインからのスローインでゲームを再開するか、バックコートのゲームが止められた場所に最も近いアウトオブバウンズからのスローインでゲームを再開するかを選択することができる。
“2021 バスケットボール競技規則” 「公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)」より引用
このルールを「ファウルゲーム」と組み合わせて利用することで、フリースローを決められた後、タイムアウトを取れば、ゲームクロックを進めずにフロントコートからオフェンスをスタートすることができます。
ゲームの終盤で勝っているときのセオリー
ディフェンスでは
- できるだけファウルをしないようにプレッシャーをかけ続ける
- 得点力のある選手にボールを持たせない
- ゴールラインを守り、ドライブを防ぐ(簡単な得点を許さない)
- スリーポイントシュートにはプレッシャーをかける(簡単な得点を許さない)
- ハーフコートでディフェンスして速攻を防ぐ(簡単な得点を許さない)
- ディフェンスリバウンドでのボックスアウトを徹底する(セカンドチャンスは与えない)
オフェンスでは
- 攻撃的な姿勢を崩さずシュートで終わる(守りに入らない)
- できるだけ確実な方法で攻める(無理に攻めない)
- 速く正確にボールを回す(ボールを奪われない)
- 相手にスタミナが無いなどの弱みがあれば徹底的に攻める
ゲームの終盤で負けているときのセオリー
- 積極的にプレスをかける(ボールを奪って攻撃回数を増やす)
- 5秒バイオレーションを狙う(ボールを奪って攻撃回数を増やす)
- スティールやパスカットを狙う(ボールを奪って攻撃回数を増やす)
- 必要に応じてファウルする(ファウルゲーム)
- 両端で積極的にリバウンドを狙う
- なるべく早く攻める(シュート回数を増やす)
- 強くゴールを狙う(相手はファウルを恐れるためディフェンス力が弱くなる)
ゲームの終盤での特別なプレー
ファウルゲーム
ゲーム終盤にわざとファウルをして、ゲームクロックを一旦止めます。相手にフリースローを与えてしまうため失点のリスクを伴いますが、ポゼッションを得ることで攻撃回数を稼ぐことができます。
ファウルゲームを行うタイミングは基本的にコーチが残り時間や点差などから総合的に判断しますが、逆転可能な点差のとき、残り試合時間が24秒を切った場合はファウルゲームを行うことが多いです。
ファウルがアンスポーツマンライクファウルにならないように注意しなければなりません。
アンスポーツマンライクファウルでは、フリースローを相手に与えてしまうだけでなく、相手ボールでの再開になってしまいます。
あまりにボールに無関係なファウルをしてしまったり、残り2分を切ると、フリースローが入る前の接触がアンスポーツマンライクファウルになってしまいます。
“2021 バスケットボール競技規則” より
“第4クォーターや各オーバータイムで、ゲームクロックに2:00 あるいはそれ以下が表示されている状態でアウトオブバウンズからスローインを行うときに、まだボールが審判あるいはスローインを行うプレーヤーの手にある間に、コート上のディフェンスのプレーヤーが相手プレーヤーに起こす不当な触れ合い。 ”
意図的にフリースローを外す
フリースローは2本決めてようやく2点入りますが、2本目のフリースローを意図的に外すことで、1本目のフリースローでの1点に加えて、フィールドゴールでの2点シュート放ち合計3点を奪うことを狙います。