『トラベリングの正解を知る(2023年最新)』~図解でルールを噛み砕く~

※2023年7月30日:「JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629)」に対応。
※2023年4月1日:「8.ジャパニーズステップについて」を追加。

トラベリングはバスケのルールの中で、最も基本的で最も難解なルールです。「ボールをキャッチするタイミング」「軸足が動いたかどうか」「両足で着地したときはどうするか」など、わかりにくいシチュエーションを中心に、本投稿では、誰でも理解できるように図解で「トラベリング」を簡単に尚且つ詳細に説明します。

トラベリングの概要

ドリブルをせずに歩いたとき、またはドリブルの後にボールを持ったまま3歩以上歩いたときに宣告されるバイオレーションのことです。
トラベリングを宣告されると、一番近いコート外の位置から相手のスローインで再開されます。

バスケのルールの中でもとくに判定が難しく、新しいルール「ゼロステップ」が導入されるなどルールの改訂が進んでいますが、判断や解釈に幅があり、なにかと話題になりやすいルールです。

ゼロステップについて

国内では、2018年にゼロステップの概念が導入され、比較的最近変わったルールであるため、審判やコーチ、選手の中でも、未だに解釈にずれが生じやすい。また、ドリブルムーブやボールミートなどのボールコントロール時のステップに関するルールであり、場合によっては勝敗に関わる重要なルールであるため、正確に理解したい。

トラベリングをコールされやすい場面

トラベリングは以下の4つシーンで特に起こりやすいバイオレーションです。

  1. ドリブルを止めたとき
  2. パスをキャッチしたとき
  3. ドリブルの突き出し
  4. ポストアップなどで軸足が動いたとき

この中で判断が難しいのが、動きながらボールを扱う状況となる1~3です。この3つの場面について以下で図解します。

図解で「トラベリング」を噛み砕く

ドリブルを止めたときのトラベリング

ドリブルストップ時のステップ(1)

ドリブルストップ時のトラベリング図1
※パスまたはシュートをしなければ、3歩目が着地した時点でトラベリングとなる

ドリブルストップ時のステップ(2)

ドリブルストップ時のトラベリング図2
※パスまたはシュートをしなければ、3歩目が着地した時点でトラベリングとなる

パスをキャッチしたときのトラベリング

パスキャッチしたときのステップ

パスキャッチ時のトラベリング図
※ピボットフットが確立している場合、パスまたはシュートをしなければ、ピボットフットが離れた時点でトラベリングとなる

空中でパスキャッチして両足着地したときのステップ

両足着地時のトラベリング図
※パスまたはシュートをしなければ、ピボットフットが離れた時点でトラベリングとなる

ドリブル突き出しのトラベリング

ドリブルの突き出しはボールが手から離れる前に軸足(ピボットフット)がフロアから離れたらトラベリングになります。

ドリブルの突き出しOK
ドリブルの突き出しNG
注意

突き出しのトラベリングの判断基準は、ボールがフロアに着いたときの軸足(ピボットフット)の状態ではありません。

トラベリングに気をつけなければならない場面

1.動きながらボールをキャッチしたとき

  • ドリブルを終えたとき
  • パスを貰ったとき
  • リバウンドを取ったとき
  • ルーズボールを取ったとき
  • 相手からボールを奪ったとき
関連ルール

動きながらボールをキャッチした後、2歩までステップしてよい。ただし、1歩目がピボットフットになる。

2.ジャンプしてボールをキャッチしたとき

  • 空中でパスをキャッチしたとき
  • 空中でリバウンドを取ったとき
  • 空中でルーズボールを取ったとき
関連ルール

ボールを空中でキャッチした後、着地した片足または両足が1歩目(ピボットフット)。

3.ボールを持って転んだとき、または転がりながらルーズボールを獲得したとき

関連ルール

ボールを持ってフロアに倒れた後、そのまま立ち上がったり、ディフェンスを避けるために、転がったりするとトラベリング。
※ただし、許容範囲が広く、判断基準が審判の状況判断に委ねられるケースが多い。

4.止まった後の動き出し(ドリブル・シュート・パス)

  • ドリブルの突き出しのとき
  • 止まってピボットフットが確立した後のパスまたはシュート
関連ルール
  • ドリブルの突き出しはピボットフットが地面から離れる前にボールをリリースしなければならない。
  • ピボットフットが地面から離れた場合、次の足が地面に着く前にパスかシュートをしなければならない。

5.動きながらボールキャッチ後のドリブル

  • パスを貰ったとき
  • リバウンドを取ったとき
  • ルーズボールを取ったとき
  • 相手からボールを奪ったとき
関連ルール

動きながらボールをキャッチした後のドリブルは、2歩目が地面につく前にボールをリリースしなければならない。
※ただし、1歩目のピボットフットが確立した後に止まった状態が出来た場合は、「4.止まったあとの動き出し(ドリブル・シュート・パス)」と同様。

6.動きながらボールキャッチ後のパスやシュート

  • ドリブルを終えたとき
  • パスを貰ったとき
  • リバウンドを取ったとき
  • ルーズボールを取ったとき
  • 相手からボールを奪ったとき
関連ルール

動きながらボールをキャッチした後のパス・シュートは2歩目が地面についた後でボールをリリースしても良い。
※ただし、ボールをリリースする前に3歩目の足が着地したらトラベリング。

7.レイアップシュートのとき

特にギャロップステップやユーロステップのとき

関連ルール
  • ボールを持って同じ足を連続してステップしたらトラベリング。
  • ボールをキャッチしたときにフロアに着いているいる足は0歩目と数える。(ゼロステップ

8.ジャパニーズステップについて

ボールをキャッチするとき、なるべく空中でボールをキャッチして、両足で着地することを教えられます。

この動きは、両足で着地することで、どちらの足を軸足にすることもできるし、テニスのスプリットステップのように、どの方向にも素早く動くことができるので、ボールミートのときに有効なステップです。

ジャパニーズステップ」はそのステップから、派生したと言われていますが、空中でキャッチし、着地したあとで、もう一度小さくジャンプする動きであったり、動きながらキャッチして、2歩歩いてからさらにジャンプしてから止まる動き、または片足でスキップするような動きなど、実際にはトラベリングですが、今までは比較的許容されてきた動きのことです。

しかし、2023年はワールドカップが沖縄で開催されるなど、日本のバスケの注目度が国際的に高まってきているので、今後は注意しなければならない動きとして追記しました。

JBAのプレーコーリングガイドライン※のトラベリング解釈のご紹介

※:「JBAプレーコーリング・ガイドライン」とは:審判員が判定を下すうえでの基準、重要なポイント、解釈をまとめたもの

今回(JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629))はルールの変更ではありませんが、上記のジャパニーズステップなどのトピックもあり、改訂されたものと予想します。

20ページ弱にまとめられていてページ数も多くないので、審判やコーチの方だけでなく、選手やより深くルールを知って観戦したい方にも是非読んで欲しいガイドラインです。

(1)基本的な考え⽅

① FIBA ルール改正により 2017 年からトラベリングのルールが⼀部変更され、【0 歩⽬の適⽤】が認められることとなった。
② 動きながら⾜がフロアについた状態で、ボールをコントロールした場合のステップの数え⽅が下記図のように変更された。
③ 【0 歩⽬の適⽤】に関わらず本来トラベリングを適⽤すべきプレーに対して的確に判定がされていないケースが起きている。
④ 明らかなトラベリングに関してはルール通りにバイオレーションを宣する必要がある。

引用元:「JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629)

JBAのYoutube公式チャンネル【審判】プレーコーリング・ガイドラインのプレイリストにトラベリング関連の動画があります。下で紹介しているもの以外にもいくつか紹介されていますので気になる方は視聴をお勧めします。

補足

審判の方も選手の方も結局は実際の試合経験で培うしかない部分ですが、少しでもたくさんの動画を観ることで「トラベリング感覚」が向上するのではないでしょうか。

【2023プレーコーリング・ガイドライン】トラベリング

0歩(ゼロステップ)を適用しないケース

① ⽌まった状態でボールをコントロールした場合。
② 明らかに空中でボールをコントロールし、最初にフロアについた⾜がピボットフットとして確⽴された場合。
③ 0 歩⽬を適⽤しないケースでは次のプレーに対しては的確にトラベリングのバイオレーションを宣する。

  • ピボットフット(軸⾜)が確⽴されたあと、明らかにピボットフットを踏みかえること。(軸⾜の踏みかえ)
  • 明らかにピボットフットがずれること。(軸⾜のずれ)
  • ドリブルを始めるとき、明らかにピボットフットがフロアから離れたあと、ボールをリリースすること。(突き出しの遅れ)
引用元:「JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629)

0歩(ゼロステップ)を適用するケース

① 動きながら、⾜がフロアについた状態で、ボールをコントロールした場合。
② 「動きながら」とは、ボールをコントロールする前に、明らか な位置の移動がありながら動いている⼀連の動作をいう。
③ フロアについている⾜は 0 歩⽬とし、1歩⽬がピボットフット、2歩⽬がフリーフットとなる。
④ ドリブルが終わるときも、動きながらであれば0歩⽬が適⽤される。
⑤ 0 歩⽬を適⽤したケースであっても、次のプレーに対しては的確にトラベリングのバイオレーションを宣する。

  • ドリブルを始めるときに、2 歩⽬の⾜をフロアにつけたあと、ボールをリリースすること。
  • 連続して同じ⾜(右→右、左→左、両⾜→両⾜)を使うこと。
引用元:「JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629)

絶対に真似してはいけないNBAのトラベリングの動画

トラベリングのガイドライン(旧バージョン)

”JBA プレーコーリング・ガイドライン(20210301)“ より引用
この説明は「JBAプレーコーリング・ガイドライン(20230629)」ではなくなりましたが、参考資料としてしばらく残します。

1動きながらフロアに足がついた状態でボールをコントロールした場合、コントロールをした後に2歩までステップを踏んでも良い。(0歩目の適用)
その場合、ステップは2歩までの原則は変わらないため、0歩目→1歩目→2歩目とし、1歩目→2歩目→3歩目とカウントはしない。
※0歩目適用の場合、1歩目がピボットフットとなる。
2ドリブルが終わる時も、上記1の考え方が適用される。
3上記1、2の場合、明らかに空中でボールをコントロールしたあと、フロアに足をつけた場合は、そのついた足が1歩目(ピボットフット)となる。
4ドリブルする場合
止まった状態からドリブルをする場合、ピボットフットがフロアから離れる前にボールをリリースしなければならない。
0歩目が適用され一連の動きの中でのドリブルの場合、2歩目がフロアにつく前にボールをリリースしなければならない。ただし、1歩目のピボットフットが確立した後に止まった状態が出来た場合は、上記4①が適用される。
5ショット及びパスの場合は、2歩目のステップ後にボールをリリースしても良い。ただし、2歩目でジャンプした場合、次に足がフロアにつく前にショット及びパスをしなければならない。
6同じ足(右→右、左→左、両足→両足)を連続して使うことはできない。
7両足とは、ほぼ同時にフロアに足がついた状態である。

  

関連記事

公式ルール(「2023 バスケットボール競技規則」の抜粋

“2023 バスケットボール競技規則 (公益)日本バスケットボール協会 2023 年4 月1 日施行” より引用

25-2   ルール

25-2-1  コート上でライブのボールをキャッチしたプレーヤーのピボットフットの決め方:

  • フロアに両足で立ったままボールをキャッチしたプレーヤーの場合:

−片足を上げた瞬間、もう片方の足がピボットフットになる

−ドリブルを始めるためには、ボールが手から離れる前にピボットフットを上げてはならない

−パスもしくはショットをするためにピボットフットでジャンプすることはできるが、どちらかの足がフロアに着地する前にボールを手から離さなくてはならない

  • 動きながらまたはドリブルを終えるときにボールをキャッチしたプレーヤーは、ストップしたりパスやショットをするために、2歩までステップを踏むことができる:
補 足

動きながら足がフロアについた状態でボールをコントロールした場合、フロアについている足は0歩目とし、その後2歩までステップを踏むことができる。その場合、1歩目がピボットフットになる。

−ボールをキャッチした後ドリブルを始めるには、2歩目のステップを踏む前にボールを離さなければならない

−1歩目のステップは、ボールをコントロールしたあとにフロアについた片足または両足である

−2歩目のステップは、1歩目のステップのあとにフロアについた反対の足または同時についた両足である

−プレーヤーの1歩目のステップがほぼ同時に両足でフロアについたとき、ピボットをする場合はどちらの足でもピボットフットにすることができる。両足でジャンプした場合は、フロアに着地するまでにボールを手から離さなくてはならない

−プレーヤーが片足でフロアに着地したときには、その足しかピボットフットにすることができない

−プレーヤーは1歩目のステップで踏み切り、両足で同時に着地してもよいが、どちらの足でもピボットすることはできない。片足または両足のいずれかがフロアから離れたときには、足がフロアにつく前にボールを手から離さなくてはならない

−両足がフロアから離れた状態から両足を同時にフロアについたときは、片方の足を離したときにもう片方の足がピボットフットになる

−ドリブルを終えたあと、あるいはボールをコントロールしたあとに、連続して同じ片足でフロアに触れたり、連続して両足でフロアに触れてはならない

25-2-2  プレーヤーがフロアに倒れること、横たわること、座ること:

  • ボールを持ったままフロアに倒れたり滑ったり、あるいはフロアに横たわったり座ったりしている状態で、ボールをコントロールすることは認められている
  • その後にボールを持ったまま転がるか、立ち上がることはバイオレーションである

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