本記事は、試合前などに要点を確認するために、TO主任マニュアル 20220401版
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)を要約したものです。実際にTO主任を行う際は、TO主任マニュアル
を必ずご確認ください。
TO主任とは
公益財団法人日本バスケットボール協会(以下、JBA)TO委員会は、「TO主任」をTOのサポート役として、オフィシャルチームの一員に位置づけることにしました。
JBA監修「TO 主任マニュアル」より引用
なお、「コミッショナー」はU12、U15カテゴリーの「マンツーマンコミッショナー」とも異なります。
TO主任の仕事
- 試合前の準備
- 試合中のサポート
- ミーティング
- 各クルーのチェックポイント
- トラブル対応
1.試合前の準備
- 機材・器具等の操作方法(修正方法を含む)と特性を把握する。
- 筆記用具(ボールペン[赤/黒or青]、定規、バインダー、付箋、メモ用紙)とストップウォッチの準備を確認する。
- スコアシートの事前記入事項(プリンター印字も可)、エントリーシート(メンバーリスト)との照合、ゲーム終了後の締め作業(審判のサイン等)と提出先を確認する。
- トラブルが発生した場合の連絡先や報告先を事前確認する。
※以下TOマニュアルハンドブック 2022年5月
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)より引用
スコアボードの確認
- 操作盤(入力装置) の操作方法及び修正方法
- 得点の表示方向(A チームが左、B チームが右)
- タイムアウト回数の表示方法(加算式 or 減算式 or ランプ表示)
- チームファウル数、クォーター数・OT(延長)・INT(休憩)表示の有無
ゲームクロックの確認
- 操作盤(入力装置) の操作方法及び修正方法
- 10 分の 1 秒表示機能の有無
- 次のクォーター、インターバル、オーバータイムの計測開始方法(プリセット機能の有無を含む)
- ブザーと 0 秒表示とのタイムラグの有無
ショットクロックの確認
- 操作盤(入力装置) の操作方法及び修正方法
- 10 分の 1 秒表示機能の有無
- 非表示機能の有無
- ブザーと 0 秒表示とのタイムラグの有無
- 14 秒リセットの方法(「24」を表示せずに 14 秒にリセットできるか)
ブザー類の確認
- ブザーの種類とそれぞれの音量・音色。
- スコアラー用は、クロックのブザーと別か。どちらかと同じか。
- タイマー用のブザーは、スコアラー用と別か。共用の場合、スイッチボタンはタイマーも押せる位置にあるか。
タイムアウトと交代のブザーはスコアラーが鳴らし、インターバルとタイムアウトのブザーはタイマーが鳴らす。タイマー用のブザーがない場合(スイッチがタイマーの押せる位置にない場合) は、スコアラーがタイマーの代わりに鳴らす。
2.試合中のサポート
※以下TO主任マニュアル 20220401版
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)より引用・要約
(1) ゲーム開始直後の見極め
- ジャンプボール時のゲームクロック、ショットクロックのスタート、アローの表示
- シュートが入ったときの得点の記録と表示
- ファウルが起きたときの記録と表示、審判とのコミュニケーション(アイコンタクト、同時復唱、サムアップ)
- 笛が吹かれたときのゲームクロック、ショットクロックのストップ
- スローイン、フリースローの後のゲームクロック、ショットクロックのスタート
- ショットクロックのリセット
- クルー間のコミュニケーション
(2) 声かけ
- 「4.各クルーのチェックポイント」を参考に、必要に応じて声かけを行う。
- よい仕事には「グッジョブ︕」
- 少し慌てているときは「大丈夫だよ。落ちついてやろう」
- クルーが気づいていないときには「このシュートが入ったら、タイムアウト(交代)だよ」など。
- ゲーム中に視野をコートから離すことのないよう、声のかけ方やタイミングに配慮すること。
(3) 前半終了時の確認
- ハーフタイム時、前半の得点・ファウル数、後半に最初のスローインをするチームを確認するときに立ち会う。
3.ミーティング
※以下TO主任マニュアル 20220401版
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)より引用・要約
(1) ゲーム前のミーティング
- 各クルーの役割分担を確認する。
- 機材の操作方法等の説明を行う。
- 「4.各クルーのチェックポイント」を参考に、アドバイスを簡単に行う。
- TOクルーからの質問に答える。
- TOが中立であることを確認する。
- 可能ならば、審判クルーとのミーティング(顔合わせ)も行う。
(2) ゲーム後のミーティング
- 初めに感謝とねぎらいの言葉を掛け、ゲームの振り返りを行う。
- ミスやトラブルの検証は、責任の追及ではなく、原因を分析して再発防止策を考えることに重点を置く。
- SNS やネットにTO についての安易な情報発信を行わないよう注意喚起する。
4.各クルーのチェックポイント
※以下TO主任マニュアル 20220401版
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)より引用・要約
(1) 全クルー共通
- 正しい姿勢で座っているか。
- 操作ボタンに手(指)をかけ、瞬時に押せる準備ができているか。
(2) スコアラー
- 得点やファウルのたびに、アシスタントスコアラーとコールの交換ができているか。
- 審判のレポート時のコミュニケーション(アイコンタクト、同時復唱、サムアップ)ができているか。
- ポゼッションアロー反転のタイミングを正しく理解し、実践できているか。
- ショット成功のとき、「ベンチの確認 ⇒ ライブの確認 ⇒ 記入」を常に実践しているか。
- タイムアウト、交代の合図の出し方(ブザー、シグナル)は適切か。
(3) アシスタントスコアラー
- 得点やファウルのたびに、スコアラーとコールを交換し、さらに目視による確認ができているか。
- ファウル個数の表示・赤色標識の表示を正しく行っているか。
- スコアラーの得点、ファウル、交代などの確認を適切にアシストしているか。
(4) タイマー
- スタート/ストップ時の声出しと目視による確認を行っているか。
- ゲーム再開時に、残り時間を「324!」(3分24秒)のようにコールして確認しているか。
- ゲーム再開時に、ゲーム再開の準備が整っていることを確認したのちに手を挙げているか。
- ショットクロックのカウントダウンを行っているか。
- タイムアウトは、審判が宣したところから計測しているか。
(5) ショットクロックオペレーター
- ボールのコントロールの始まりを見極めてスタートしているか。
- スタート/ストップ時の声出しと目視による確認を行っているか。
- 審判が笛を鳴らしたときは一度ストップし、シグナルを確認して継続/リセットの操作をしているか。
- フリースローのとき、非表示にしているか。(テクニカルファウルで継続の場合を除く)
- スローインのとき、24秒リセットの場合は非表示にして、14秒リセットの場合は「14」を表示しているか。
- ボールがリングに触れた瞬間に非表示にしているか。
- 各Q、各OTの開始時に24を表示しているか。
- 各Q、各OTの終わりに、正しく非表示にしているか。
- 左側のチームのチームファウルの表示を行う場合、正しいタイミングで行っているか。
5.トラブルと対処法
※以下TO主任マニュアル 20220401版
(公益財団法人日本バスケットボール協会 TO委員会)より引用
(1) スターティングファイブの食い違い
- ヘッドコーチが×印をつけた5人と、コート内にいる5人に食い違いがあった場合、TO主任は、トスアップの前に審判に伝えて、×印がついていないプレーヤーを本来出場すべきだったプレーヤーに交代させてもらう。ヘッドコーチには特に罰則は与えられない。(インタープリテーション7-4)
- ゲーム開始後に食い違いが発見された場合は、誤りは無視されゲームは続けられる。(インタープリテーション7-4)
(2) 得点の食い違い
- ランニングスコアの記録とスコアボードの表示の食い違いを発見したら、TO主任は、状況(ゲームクロックの残り時間とスコア)を記録または記憶し、次にボールがデッドでゲームクロックが止まったときに、審判を呼び、確認と訂正を行う。
- ハーフタイムのTOと両チームのスコアの照合のときに、三者の得点の記録に食い違いがあれば、審判に報告し、審判立ち会いのもとスコアシートを点検して確認し、三者の記録を一致させる。
(3) ファウルの確認漏れ・個数の食い違い
- 審判のレポートでプレーヤーの番号がよくわからなかったときは、すぐに審判を呼んで確認する。ファウルをされたプレーヤーの番号をコールするなど、審判の勘違いと思われる場合も、同様に対応する。
- ファウルの個数を表示したときに、ベンチから疑義が申し立てられることがある。ゲーム再開前であれば、すぐに審判を呼んで確認をする。すでにゲームが再開されていれば、ベンチに「確認は後にしてください」と伝え、次にボールがデッドでゲームクロックが止まったときに確認する。
- ハーフタイムのTOと両チームのスコアの照合のときに、三者のファウルの記録に食い違いがあれば、審判に報告し、審判立ち会いのもとスコアシートを点検して確認し、三者の記録を一致させる。
(4) 3ポイントの判断の食い違い
- フィールドゴールが2点か3点かは、審判のシグナルを見て2点か3点かを判断する。
- スリーポイントライン付近のショットに対して、2点のシグナルを出す審判と3点のシグナルを出す審判がいた場合、スコアラーが戸惑っていたら、とりあえずどちらかの点数で記録するよう指示する。TO主任は、そのときの状況(残り時間、シューターの番号、何点目の得点か、ショットされた位置など)を記録または記憶しておき、次にボールがデッドでゲームクロックが止まったときに、審判を呼んで確認をする。
(5) スコアシートの記入ミス
- 誤って記入した箇所は二本線で消し、周囲の余白に正しい数や記号を記入する。修正テープや修正液は使わない。
- すぐに訂正ができないときは、該当箇所に付箋を貼り、タイムアウトやインターバルの間などで訂正する。
- ファウルの記号、ゲーム出場の×印、チームファウルの×印の誤記入は、その後に生きることもあるので、付箋を貼ったままにしておいて後で訂正する。
- スコアラーが記入方法をよく理解していないと思われる場合は、ゲームの早い段階から丁寧にサポートして、誤記入の多発を予防する。
(6) ポゼッションアローの反転し忘れ
- アローの反転し忘れに気づいたら、次にボールがデッドでゲームクロックが止まったときに、審判を呼んで反転し忘れていたことを伝えた上で、アローを反転する。(タイムアウトや交代などの事象と重なったときに、反転し忘れるケースが多い。)
- アローの反転をし忘れたまま、誤った向きにスローインが行われてしまった場合、ボールがコート上のプレーヤーに正当に触れた後は、誤りを訂正することができない。(インタープリテーション12-8)
- このミス予防のために、スコア系クルーに次の手順を必ず踏んでもらうとともに、TO主任もその都度確認する。
手順︓ジャンプボールシチュエーションが起きたら、スコアラーはアローに手を置く(持ち上げない)
- オルタネイティングポゼッションのスローインの終了を確認したら反転する。
- 反転したら、アシスタントスコアラーとコールの交換をして確認する。
- アローの反転をしないケース(オルタネイティングポゼッションのスローインが終了する前にファウルが起きたとき)に注意する。
(7) ブザーを鳴らせなかったミス
- タイムアウトや交代を知らせるブザーが鳴らせなかったときに、コーチまたは交代選手からクレームがあったときは、TO主任は「次にします。」と伝える。ただし、スコアラーが「請求が遅い」と判断して鳴らさなかったにも関わらずクレームがあったときは、その状況を審判に伝え、審判から注意をしてもらう。
- ショット成功後にタイムアウトや交代を知らせるブザーが鳴らせないミスを予防するために、スコアラーに次の手順の実践を促すとともに、TO主任も得点後のベンチの確認を行う。
手順︓ショット成功 ⇒ ベンチ確認 ⇒ ライブ確認 ⇒ スコアシート記入
(8) 遅れてブザーを鳴らしてしまうミス
- タイムアウトや交代のブザーで審判がゲームを止めたときに、ブザーのタイミングが遅れていたと審判が判断した場合は、そのタイムアウトや交代は認められない。TO主任も遅れを認識していたときは、「今のブザーは遅かったです」と審判に伝える。
- このミスを予防するために、スコアラーにボールがライブになった瞬間(=交代・タイムアウトが認められる時機の終わり)を強く意識することを促すとともに、TO主任もその都度確認する。
(9) 不適切なタイムアウトの請求
- タイムアウトは請求の意思が確認できれば認める。ただし、申請手続きがわかりにくい場合は、タイムアウトになったら、審判に状況を伝え、審判からヘッドコーチに正しい手続きでタイムアウトを請求するよう注意してもらう。
- タイムアウトの請求の意思が確認できた場合、たとえ「得点されたらタイムアウト」という条件付きの請求であっても、ファウルやバイオレーションなどでゲームクロックが止まった場合もブザーを鳴らす。ただし、その前にベンチを見て、キャンセルの意思が示されていれば、ブザーを控える。タイムアウトになったら、審判に状況を伝え、条件付きのタイムアウトは認められないことをヘッドコーチに伝えてもらう。なお、プレー継続中にTO 主任がコーチに伝える機会があれば、TO 主任から伝えてもよい。
- ヘッドコーチまたはファーストアシスタントコーチは、スコアラーズテーブルから目視できるように、あるいはスコアラーズテーブルのところへ行き、定められたシグナルを手ではっきりと示して、タイムアウトの請求を伝えなければならない。(競技規則18-3-1)
- 条件付きの申し出は認められない。例えば、ヘッドコーチが「得点した場合はタイムアウトを取る」と言っても認められない。(テーブルオフィシャルズマニュアル 4.6.1)
(10) ヘッドコーチ等による交代の申し出
- ヘッドコーチまたはファーストアシスタントコーチによる交代の申し出は、受け付けない。場合によっては、審判にはタイムアウトやインターバルなど時間があるときに状況を伝え、審判からヘッドコーチに注意してもらう。
交代を請求できるのは、交代要員自身のみである。ヘッドコーチやファーストアシスタントコーチではなく、交代要員はスコアラーズテーブルへ行き、定められたシグナルを手で示す、あるいは交代席に座ることで、はっきりと交代の申し出を伝えなければならない。このとき交代要員はすぐにプレーする準備ができていなければならない。(競技規則19-3-1)
(11) ショットクロックのリセットミス(ボールがリングに触れたとき)
- ボールがリングに当たったにも関わらず、ショットクロックがリセットされないミスに注意する。
- ボールがリングに当たったかどうかがよく見えなくても、審判のリセットのシグナルを確認する。
(12) ショットクロックのリセットミス(新たなボールコントロールの始まり)
- 新たなボールコントロールが成立する前に24 秒リセットしてしまうミスが起こりやすいので注意する。
- TO 主任は、ショットクロックとゲームクロックをともに意識しながらプレーを見守る。誤って24 秒リセットした場合は、その瞬間のゲームクロックの残り時間を記憶しておく。
- 「投げ入れ」など、コントロールがワンタッチで変わるような場面に注意する。審判のリセットのシグナルを注視し、ショットクロックオペレーターにリセットを促す。
A1 からA2 へのパスにB1 が触れ、コートの外に出そうになったボールをB2 が追いかけてジャンプしてボールを片手でコート内に投げ入れ、それをA3 がつかんだ。B2 が空中でボールをつかんだときに新たにチームB のコントロールが始まる。さらにB2 投げ入れたボールをA3 がつかんだときにチームA の新たなコントロールが始まる。
(13) ショットクロックのリセットミス(継続すべきときの誤ったリセット)
- 審判の笛の後にスローインで再開するとき、継続しておくべきときにリセットしてしまった場合は、残り時間を確認してショットクロックを訂正して再開する。
- このミスを予防するために、ショットクロックオペレーターには以下の手順を必ず踏んでもらう。
手順︓審判の笛 ⇒ ストップ ⇒ 審判のシグナルを確認して、継続/リセットを判断
(14) ゲーム中の確認行為
- ボールがライブ中は、それぞれのチームによる得点等の確認は却下すること。
- ボールがデッドでゲームクロックが止められたときに来た場合は対応すること。
ゲーム中、ヘッドコーチあるいはファーストアシスタントコーチは、ボールがデッドになりゲームクロックが止められているときのみ、スコアラーズテーブルに行きスタッツの情報を得ることができる。(競技規則7-4)
(15) 機材トラブル
- 機材トラブルが発生したら、できるだけ早く審判にゲームを止めてもらう。ゲームクロックやショットクロックのトラブルの場合は、ストップウォッチで経過時間を計り始めておく。ただし、ブザーを鳴らしてゲームを止めることは行わない。